コラム

中学入試:過去問はどうすればいいのか?(2)

続きです。

具体的にどう解いていくのかですが、こういうと丸投げですが、まずは塾の先生に聞いてください。塾を信頼してアドバイスをもらうのが一番です。信頼できない場合どうするんだと言われると困るのですが、そんなら最初からそんなとこ通わないで下さいよなんて不毛な話になりますので、もう信用すること前提です。

 

とにかく、余計な意見をもとに、あっちへふらふら、こっちへふらふらという勉強法はアウト。ここでは一般的なことを書いておきます。

 

【始める時期はいつから?】

9月以降です。4科目とも、ある程度の知識がある状態で解き始めないと意味がありません。早ければ早いほどいいと、いきなり小6の4月くらいから始めてしまう無茶な人もいますが、これはダメ。単元学習が終わっていないのにやるのは無駄です。たとえば、地理も歴史も終わっていない状態で社会の過去問をやったって、できるわけがない。

 

夏休みが終われば、一応、すべての単元学習は終わっていますので、過去問に取り組む意味が出てきます。10月までに1回は、必ずやらせるようにした方が良いでしょう。リアルな点数が出て自分が受からない可能性を認識するのが怖くなって、全く手をつけないというお子さんがいますが、12月になってやってみて、ボロボロでもう絶望感しかない・・・という状況を避けるためにも、早いうちに手をつけていきましょう

 

【時間を計ること】

入試では、時間内に7割程度とること目標です。延々と考え続けて満点を取ることに意味はありません。「これは捨てる」「こっちが先」「これは後回し」など、短時間で判断をする必要があります。「納得いくまで自分のアタマで考える」という、本来の学習姿勢とは異なるものになりますが、入試ではどうしても時間との勝負になりますから、制限時間内で成果を出すということを常に意識しなくてはなりません。

 

 

【答案は他人に見せること】

良い点数を取れば親が安心すると思って、「インチキ採点」をするお子さんがいます。自覚的に嘘を申告する場合もあるのですが、むしろ無自覚にやるから注意です。つまり、本来は0点なのに、勝手に部分点を設定するとか、あわせて4点なのに、1つあっているから1点とか、ちょっと惜しいから△だとか、微妙に点数をかさ上げする。

 

だから、採点については誰か他人が関わるようにすることです。塾の先生に提出して確認してもらうなどの対応を。なお、記述については、絶対に添削をしてもらうべきです。特に国語については、解答と全く違っても正解であることがあるので、ベテランの国語の専任講師に見てもらうしかありません。

 

蛇足ながら、過去問集の国語の解答は全くあてになりません。学校が公式発表していればいいのですが、そうでない場合は、出版社によって全く違うということもあります(記号ですら!)。だから、国語の採点だけは必ず塾にお願いをしましょう。これは出版社がアホだという意味ではなく、それだけ難しいというか紛れのある出題をする方がどうかしているのです。

 

くどいですが、国語の記述は塾の先生に。文章は他人からボコボコに叩かれないと上達しません。いや、だからと言って私の駄文をボコボコに叩かないでくださいね。

 

 
【算数は見直しをきちんとすること】

過去問をたくさん解きなさいといいますと、今度は解けばいいだろうとばかり、数だけこなそうとするお子さんがでてきます。これもダメ。私が直接見ていなかった子ですが、21日になって、一度やっているにもかかわらず、第一志望校のものがほとんどできないお子さんを見たことがあるのですが、こうなると本当に絶望しかありません(当然、不合格)。

 

そうならないためにも、解き終わったら満点答案をつくること。さらにいえば、一回で満足せず、3回くらい繰り返すと良いでしょう。どんなに難しい問題でも、さすがに3回もやればできるようになってきます。そうやって、何年分も解いていくことが合格への近道です。もちろん、解答を暗記しろということではなくて、一つ一つ理解していきましょうという意味です。直しには長い時間をかけても構いません。

 

 

【理科と社会は?】

これも過去問対策が有効なのですが、一つ注意点があるとすれば、時事問題については気にしないということです。たとえば、「今年のサミットはどこで開かれましたか? 答:洞爺湖」っていつの話だよってなります。あるいは、「次の中から世界遺産になっていないものを選びなさい。ア平泉、イ白神山地、ウ厳島神社、エ姫路城」とか(当時はアが正答でも、現在では答えがない)。「今年のノーベル賞で、クロスカップリングで受賞したの誰?」「答:根岸英一」小学生にはもう歴史です(笑)。

 

また、ちょっと古いだけで統計がとんでもないことになっていることもあります。たとえば、2011年とそれ以降では原子力発電の割合が全く違います。ただし、それ以外の歴史の部分ならば、よほどの大発見(『親魏倭王』の金印が見つかった)とか、大捏造(ゴッドハンド)がない限り、同じようなものが出題されますので、十分対策にはなるでしょう。社会と比べれば、理科はもっと安定しています。まあ、教科書改訂に伴って、一斉に「手回し発電機」を出題されたりするのですが、それでも過去問が全く無意味ということはありません。

 

 

【まとめ】

まとめです。

  • まずは通っている塾でやり方を聞く。
  • 時間を計り、得点は記録する。
  • 算数・理科・社会は何度か解きなおす。算数が最優先で、満点が取れるまで繰り返すべし。
  • 国語は1回で十分。ただし、記述は絶対に塾の先生に見てもらうこと。答えだけを見て適当に採点するのは×。
  • 時期は9月以降で良いが、12月までには最低でも過去4年分くらいは一周しておく。

 

こんなところですね。

 

ここまで書いておいてナニですが、これは一般的な学校に対する勉強法です。超難関校の場合は若干異なるので、お気をつけください。本当に頭の良い子を取りたい学校は、自校の過去問にこだわらず、本当にできる子を選抜する問題を出します。このレベルのお子さんは、横に広く、他の超難関校(関西なども含め)の問題を多く解く必要があるでしょう。

 

 

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中学入試:過去問はどうすればいいのか?(1)

 

志望校の過去問をやることが重要なのは誰でも分かっていることですが、なぜ?という基本的な点と、具体的にどうするのか、という話を少し書いてみます。

 

 

【そもそもなぜ入試が行われるのか?】

私立中は、その校風にあった子たち、あるいは自分たちの教育についてこられる子たちに入学してほしいからです。たとえば、「入学後はたくさん文章を書かせますよ」という学校であれば記述が増えるでしょうし、「国語でたくさん読んでもらいます」という学校であれば国語の文章量が多くなる。つまり、求めている基礎学力があるかどうかを見たい、ということです。

 

志望者が多すぎるので、単にふるい落とすだけの入試をする場合もあるのでしょうが、たいていの私立中はそんな馬鹿なことはしていません。そんな選抜をしても、お互いが不幸になるからです。

 

 

【では、なぜ過去問をやっておくことが必要なのか】

入試の目的を考えると、過去問対策とは「入学後に勉強についていける学力を身につけること」になります。では、その学校が望むものは何なのか。抽象的なことはパンフレットでも説明会でも話してくれるでしょうが、具体的なことは入試問題として出題されています。だから、何が望まれているのかを知るためには、過去の入試問題を研究していくしかない、ということになります。

 

「求める生徒像」というのは、そうそう大きく変わるものではありません。男女共学化などの極端な変化があれば別ですが、毎年同じような出題をすることになります。求められているハードルをクリアしているかどうかは、過去問を見て判断していくしかありません。

 

 

 【いささか功利的になりますが】

どんな私立中も、「第一希望の子が多く入ってほしい」と思っています。これは自分のとこに入りたいと思っている子なら入れてあげたいなあという感情面の理由もあるのですが、「入った後で指導しやすい」という功利的な理由もあります。

 

第二志望以下で入ってくると、先生の指導もきちんと聞かない、友達関係もうまくいかない、そんなお子さんも出てきてしまいます。せっかく能力のある子に入ってきてもらっても、「スタートから学校が嫌い」では指導がやりにくい。だから、多くの私立中は第一志望の生徒を多く獲得するため、2/1の募集数を増やすとか、連続受験で優遇するとか、色々な作戦を立てている。

 

その作戦の一環として、入試問題に学校を好きな子を取るための罠が仕掛けられていることもあります。たとえば創立者の名前を出すとか(サレジオのドン・ボスコとか、農大の榎本武揚とか、山脇の山脇房子も出たことがあったか)、「修学旅行先はどこ?」とか、「体育館の横には何の植物がある?」などのワケの分からないものもあります。これは事実上の加点制度と言っていいでしょう。ちょっと本筋からはそれますが、過去問を解いていれば、そういう裏?の加点制度にも気づくことができる、ということです。

 

長くなってしまったので、具体的にどう解いていくのかは次で。

 

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小4の学習の進め方

 

中学受験をする場合、4年生から塾に通うことが一般的ですが、以前にもちょろっと書きましたが、「4年生の最初から」が必須かというとそうでもありません。他に優先させたい習い事があるならば、5年生くらいまでならそっちを優先で構いません。なぜかというと、「小5ギャップ」というのがありまして、中学受験の学習内容は小5から質的に難しくなるのですが、多くの場合は対応ができていないため、早くから通わせる価値がほとんどないからです。

 

また、「小4の壁」というのもありまして、この点にも注意して教えていかないと学習効果は期待できないのですが、これにも対応できていないように思います(というかそれ自体知らないかもしれない)。

 

 

4年生で教えなくてはいけないこと】

一言でいうなら、学習姿勢や考え方を身につけること、それから基本的な知識を覚えることです。4年生のうちは抽象的思考に慣れていませんから、簡単なことで十分。

 

まず「学習姿勢」ですが、「姿勢を正して一つせず謹聴!」という意味では全くなく、たとえば「君の答えの根拠はどこにあるの?」ということに答えられること、です。あるいは質問に正しく答えられること。正しい答えを言えるということではなく、「今日は何曜日ですか?」に対して「親方!空から女の子が!」などという訳の分からない答えを返さないこと。別に正解を答えられなくても、最低でも「○曜日」「わかりません」と答えられるだけで良いのです。いずれも大人からすれば当たり前のことですが、それができるようになるのが案外難しい。

 

次に「考え方」というのは、たとえば算数なら分数の意味が分かることとか、簡単なつるかめ算が解けることとか、その程度です。予習シリーズなどの教材を全部こなせないといけないと勘違いされる方がよくいますが、あんなもん、基本問題が解ければそれで十分でで、残りなんぞ放っておいても害はありません。応用問題などといっても、テキスト構成上、載せないと薄すぎるから載せているだけであって、4年生の時点で必要不可欠というものでもありません。何もかもやりきろうとして挫折するようなことは避けた方が良いでしょう。適当でいいんです。

 

今週の内容であれば、「28の約数は何個ですか?」という公約数の問題が出てきますが、「22×7だから、3×26個」なんてのも教える必要はありません。場合の数も分かっていないのに、公式だけ教えることに意味はないですし、むしろ公式とかやり方だけを暗記するだけのアホ算数が身についてしまいます。4年生のあいだは、手を動かして公約数を全部数えるという作業をした方が良いでしょう。難関中では、やり方を自分で探りながら解くような出題がされます。変な公式を暗記して解くのではなくて、手を動かして解くような習慣は、早いうちから身につけておくべきです。

 

さて、最後に「基本的な知識」です。

社会と理科に顕著なのですが、「4年生でしか扱わない知識」も入試で出題されます。たとえば理科ならば「紅葉で赤くなる葉っぱや黄色くなる葉っぱ」とか「春の七草」とかです。また、社会ならば、5年生以降ではあまり扱ってもらえない都道府県知識なども覚えておくと5年生以降楽ですね。

 

 

【実は通わせた方が良いんじゃないか?】

こう書いていくと、4年生から通わせないとまずいんじゃないかと思われるかもしれませんが、残念ながらこういう基本動作を教えることのできる塾はまずありません。その一つの理由は、ベテランが担当しないからです。よほど人に恵まれていれば別ですが、大抵は大学生が低学年を教えています。理由は簡単で、ベテランで有能な人は6年生に優先的に配備されることと、4年生の内容は簡単だから誰にでもできると思われていることです。とりわけ優秀な先生だと、移動して複数校舎の小6を見ることになりますので、まず4年生には回ってこないでしょう。

 

じゃあ、なんで大手塾が4年生から募集するのかといえば、純粋に経営的な問題です。四谷大塚がすっかり没落して久しいですが、この原因になったのがSAPIXの「青田刈り」です。5年生からのカリキュラムを組んでいた四谷大塚は、生徒の供給源を奪い取られて没落したという歴史がありまして、「低学年を制すれば天下を制する!」とばかり奪い合いを演じた結果、「4年生から」というのが一般化しただけです。四谷大塚は巻き返しとばかり3年生以下のリトルの強化をしたのですが、結局、4年生からはSAPIXに行ってしまうので頭が痛いとか何とか。

 

というわけで、4年生から通わせることに全く無意味とまでは言いすぎでしょうが、あまり役に立たないんじゃないかなあとも思います。ちなみに、石神井セミナーは違いますよ(笑)。

 

 

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